【コラム】払いすぎた婚姻費用は清算されるのか?

離婚前に別居をしている場合、収入の高い方から低い方へ、配偶者及び子どもの生活費として、婚姻費用を支払う義務があります。この婚姻費用の金額については、当事者間で話し合って決める場合と、裁判所の調停等で決める方法があります。相場としては、裁判所が公表している婚姻費用の算定表を用いることが多いです。ただし、実際には、収入が高い配偶者の方が、復縁を希望している等の理由から、取り決めた金額を上回る婚姻費用を支払っている場合もあります。しかしいざ離婚することになると、過去に婚姻費用を支払いすぎているので、それを清算してほしいという主張がされることが少なくありません。このような主張は認められるでしょうか。

 

1 過去に支払いすぎた婚姻費用は財産分与で調整

支払いすぎの婚姻費用がある場合には、その分が財産分与の前渡しとみなされ、財産分与の中で調整することができます。

最高裁昭和53年11月14日(判時913・85)は、「財産分与の額及び方法を定めるにつき当事者双方の一切の事情を考慮すべきことは民法771条、民法768条3項の規定上明らかであるところ、婚姻継続中における過去の婚姻費用分担の態様は右事情の1つに他ならないから、裁判所は当事者の一方が過当に負担した婚姻費用の清算のための給付をも含めて財産分与の額及び方法を定めることができる」としています。

 

2 どんな場合に財産分与の中で調整されるのか

まず、当事者双方の収入と子どもの人数を元に、算定表で婚姻費用の金額を確認します。そして、実際に支払われた婚姻費用との差額を計算します。例えば、算定表上の婚姻費用の金額が14~16万円、実際に支払ってきた婚姻費用が20万円であれば、4~6万円が相場よりは多くしはらった分となります。しかし、算定表を上回る金額を支払っていたからといって、当然に、超過分を財産分与の前渡しとして評価されません。当事者が自発的に,あるいは合意に基づいて婚姻費用分担をしている場合に,その額が当事者双方の収入や生活状況にかんがみて,著しく相当性を欠くような場合に限って、超過分が財産分与の前渡しとして評価され、財産分与において考慮されます。裁判所は、この相当性を欠くかどうか(過当に婚姻費用を分担しているか)どうかについては、厳しく判断している傾向にあります。

 

3 判例

算定表を超える婚姻費用が支払われていましたが、著しく相当性を欠いて過大であったとはいえないとされた裁判例を紹介します。

大阪高決平成21年9月4日(家月62巻10号54頁)

(1)事案

夫が妻に対し、約12年間は月額平均約24万円、その後の約2年間は月額20万円の婚姻費用を支払っており、その金額が賞与を除く給与の月額手取額の2分の1をやや下回る額だったという事案です。(より正確には、平成6年×月から平成20年×月までの13年10か月(166か月)の婚姻費用として合計3919万9880円を送金し,このうち,平成17年×月から平成20年×月までの28か月は月額20万円の割合により送金(20万円×28か月=560万円)しているから,平成6年×月から平成17年×月までの138か月に合計3359万9880円を送金したことになり,これを月平均すると,24万3477円(円未満切捨て)となる事案です)

(2)裁判所の判断

・妻は夫と婚姻後,家事や育児に専念し,婚姻して10年ほど経ったころから宗教活動に多くの時間を割くようになったが,更に12年ほどは夫と同居し,宗教活動をしながら育児や家事をする生活を続け,長期間就労していなかった。

・夫が妻や子らを残して出た自宅には家賃を要した

以上の事情等をかんがみると、夫が送金していた,賞与を除く給与の月額手取額の2分の1をやや下回る額(平成17年×月以降はこれを更に下回る月額20万円)が著しく相当性を欠いて過大であったとはいえない。なお、

・妻の収入を0として,標準的算定方式に基づく標準的算定表に相手方の各年度の収入を当てはめると,婚姻費用の標準月額は,平成6年が14万円から16万円の範囲内,平成7年が18万円から20万円の範囲内,二女が成年に達した平成8年×月以降は14万円から16万円の範囲内,あるいは,16万円から18万円の範囲内であるから,この点でも,夫が妻に対して送金した婚姻費用が著しく相当性を欠いて過大であったとまではいえない。

 

4 まとめ

支払いすぎた婚姻費用が問題となるケースでは、その払い過ぎと主張されている金額がいくらなのか、当事者双方の収入や生活状況などを個別具体的に考慮して、財産分与の中で考慮するかどうかを検討する必要があるでしょう。相手方から、支払いすぎた婚姻費用があると主張されている場合には反論できる可能性も十分にありますので、このコラムが参考になれば幸いです。

 

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